「事故を乗り越えて、5年目の春 」

 JR福知山線脱線事故から5年。事故に遭った松丸の記事が毎日新聞夕刊(平成22416日)に掲載されました。今回はその記事を紹介します。

 
税理士事務所に勤務する松丸さんは顧客先に向かうため、川西池田駅から乗車し、事故に遭った。マンションの壁に巻きつくようにひしゃげた2両目から救出されたが、頭や右肺、肝臓を損傷した。現場で治療の優先順位を判定するトリアージでは救命困難を示す黒色タグを付けられた。

  恵子さんが駆けつけた病院で目撃したのは、体中にチューブが差し込まれ、包帯で覆われた松丸さんの姿だった。
「何でこんな目に……」。最悪の事態が頭をよぎった。
松丸さんは数日後、意識を取り戻した。恵子さんは仕事の合間を縫って週35日、松丸さんを見舞った。そのかいもあって、松丸さんは2カ月で退院。一見、順調な回復ぶりだったが、当初は人と会ったことをすぐに忘れてしまうなど記憶力や思考力の低下が目立った。また、頭の中がヒリヒリと痛むような感覚もあった。検査で異常は見つからなかったが、いつ症状が出るか不安が残った。
そんな松丸さんを恵子さんは支え続けた。二人で外出した思い出や、かつて知人と交わした会話について話し、少しでも記憶力が戻るよう心がけた。いつしか、記憶力も元に戻った。
30歳を超えた松丸さんは、家庭を築く友人の姿にも後押しされ、結婚を決意した。恵子さんは「事故に遭って5年がたち、相手の大切さをより一層認識できた。事故を乗り越えて今の二人がある」と話す。
松丸さんは「幸運にも、失わずに済んだ命。交際から10年、事故から5年を節目として、仕事と家庭を今より大切にしたい。笑顔の絶えない家庭を築いていきたい」と語った。

毎日新聞 夕刊 平成22年4月16日掲載

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